WANKOVISTA JOURNAL|おもしろ科学
🐾 愛犬の「なんで?」を探検犬はうんちのとき
南北を向く!?
地磁気と排泄姿勢の
不思議な研究
クルクル回って、ようやく「ここ!」。いつものお散歩に、ちょっと驚きの科学が隠れているかもしれません。研究論文と一緒に楽しく探ってみましょう。
お散歩中、愛犬が排便前に「くるっ、くるっ」と回る姿。かわいいけれど、なぜ?と気になりますよね。
実は2013年、犬の排泄時の体の向きと地球の磁場(地磁気)の関係を調べた研究が発表されました。しかも観察回数は、なんと約7,500回! ただし、ここには大切な区別があります。「南北を向く傾向が報告された」ことと、「回る原因が地磁気だと証明された」ことは別なのです。
この記事でわかること
① クルクル回る理由として考えられること ② 2013年の研究が実際に調べたこと ③ 地磁気研究の面白さと限界 ④ 愛犬の方向を記録する「うんちコンパス」 ⑤ 体調面で注意したいサイン
01|DAILY MYSTERY
まず、犬がうんち前にクルクル回るのはなぜ?
「絶対に3回転してからじゃないと落ち着かない」「草むらを入念にチェックする」など、愛犬ごとに小さなこだわりがありますよね。排便前の旋回には、いくつかの考えられる理由があります。
においを確かめている
犬にとって地面のにおいは大事な情報源。周囲の犬のにおいや場所の状態をチェックしている可能性があります。
周囲の様子を確認している
排泄中は動きにくい時間。落ち着ける場所か、周囲の刺激が気にならないか確認しているのかもしれません。
草や地面の具合を整えている
足元が不安定だったり、草が長かったりすると場所を変えたくなることも。快適な姿勢を探す行動という見方があります。
その子なりの習慣
回る回数や場所の選び方は犬によって違います。毎回クルクルしなくてもおかしなことではありません。
散歩中のクルクルは、地磁気を扱った研究とは別の行動。研究は「排泄するとき犬の体がどの方向を向いていたか」を測っています。ここからが、今回の科学のお話です。
02|THE STUDY
本当に犬は「南北」を向く? 2013年の研究
2013年12月、動物行動を研究する科学者たちは、学術誌 Frontiers in Zoology に興味深い研究を発表しました。タイトルは「犬は地球の磁場の小さな変化に敏感である」という意味です。
チェコとドイツで犬が屋外で排泄する際の体の向きを記録し、その時間帯の地磁気の変化と照らし合わせました。観察には手持ちの方位磁針などが使われています。
研究で報告された、意外な傾向
研究チームは、地磁気の方向の変化が小さい条件では、犬が排泄時に体を南北軸に沿わせる傾向があると報告しました。一方、磁場の方向が不安定な条件では、そのような方向の偏りは見られにくくなりました。
「北を向く」だけではなく「北か南、いずれかの向きに体の軸が沿う」というお話。犬が必ず北を向くわけではありませんし、すべての排便が南北を向くという意味でもありません。
原著論文:Hart V, et al. (2013), Dogs are sensitive to small variations of the Earth’s magnetic field. 論文本文
03|SCIENCE OR MYTH?
「わかったこと」と「まだわからないこと」
◯ 磁場が安定したときの南北方向の傾向
2013年の観察研究は、特定の磁場条件下で、排泄時の体の向きに偏りがあったと報告しています。
? クルクルする理由=地磁気
なぜ旋回するかを直接検証した研究ではありません。においや足元の状態など、ほかの要因も考えられます。
◯ 別の行動でも地磁気との関連を調査
2020年には、狩猟犬が飼い主のもとへ戻る際、南北方向に短く走る「コンパスラン」を報告した研究もあります。
? 一般家庭の犬も同じ結果になる?
場所・時間・地磁気の状態などで観察条件が変わります。日常の数回の記録から結論を出すことはできません。
「磁場を感じる能力があるのかも」と考えるとワクワクしますが、研究結果は条件つきの統計的な傾向。観察からすぐに原因・仕組みが確定したわけではありません。
「地磁気の影響で犬は必ず南北を向く」「クルクル回れば北がわかる」は言い過ぎ。研究でいう磁場の安定性まで、日常の方位磁針だけでは判定できません。
04|TRY IT WITH YOUR DOG
遊びながら観察!「うちの子のうんちコンパス」
「うちの子は何向きが多い?」を、ちょっとだけ記録してみませんか。研究を再現するものではありませんが、愛犬の小さな習慣を知るきっかけになるかもしれません。
観察をもっと楽しくする3つのコツ
- 無理に方向を変えない。 犬に「北を向いて!」と指示する必要はありません。
- 同じ場所だけに偏らず記録する。 壁や植え込みなど、場所の形にも影響されるかもしれません。
- 数字で証明しようとしない。 地磁気の状態も記録していないので、親子の自由研究や観察メモとして楽しむのがおすすめです。
05|SCIENCE QUIZ
3択クイズ! あなたは犬の「地球研究員」?
研究内容を覚えたら、3問のクイズに挑戦。答えるたびに解説が表示されます。
Q1. 2013年の研究が主に調べたことは?
正解はB! 研究では排泄時の犬の体の向きを測定し、地磁気の変化と照らし合わせました。クルクルの速さは研究の主題ではありません。
Q2. 「南北方向にそろう」とはどんな意味?
正解はC! 「北向き」だけでなく「南向き」も含む、体の軸についての研究です。
Q3. 愛犬がクルクル回ったら、地磁気を感じている証拠になる?
正解はB! 旋回の理由は別のテーマ。においや周囲の安全、地面の状態など、複数の可能性があります。
答えた問題:0 / 3
06|HEALTH FIRST
かわいいクルクル。でも、こんなときは健康チェックを
大切なのは方角より、愛犬がいつもどおりにスムーズに排泄できているか。クルクルが突然長くなった、何度もしゃがむのに出ない、痛そうにするなどの変化は見逃さないようにしましょう。
- 何度も踏ん張っているのに、便がほとんど出ない
- 血便、強い痛み、腹部の張りがある
- 嘔吐、食欲低下、元気がない様子もある
- 急に旋回が増え、ふらつきや落ち着きのなさが続く
特にぐったりしている、激しく痛がる、腹部が張っている、排便・排尿が困難な場合は早急に獣医師へ。自己判断で人用の下剤・浣腸は使わないでください。
犬はにおいや環境の刺激に敏感です。排泄中に引っ張ったり急かしたりせず、道路やほかの犬との距離に気を配ってあげましょう。
排便時には方角だけでなく、便の硬さ・色・回数・いきむ様子にも目を向けてみましょう。いつもと違う変化が続くときは、記録して獣医師に伝えると役立つことがあります。
07|FREQUENTLY ASKED QUESTIONS
よくある質問
Q. うちの犬はクルクルしません。変ですか?
変ではありません。犬によって排泄前の行動はさまざまです。落ち着いて排便でき、便や体調に問題がなければ、回らないことだけを心配する必要はありません。
Q. うんちをするとき、いつも北を向くのでしょうか?
いいえ。研究で報告されたのは、特定の地磁気条件下での南北方向への統計的な偏りです。北向きだけでなく南向きも含み、すべての犬に必ず当てはまるという意味ではありません。
Q. スマホのコンパスで研究結果を再現できますか?
方角の目安として使うことはできますが、研究では地磁気の時間的な変化も扱っています。スマホの方位記録だけでは同条件を再現できず、建物や金属の影響で方向がずれることもあります。
Q. クルクルが多いとストレスのサインですか?
回る回数だけでは判断できません。周囲の刺激を気にしている、足元を整えている、排便しにくいなど、いくつかの可能性があります。急な変化や排便困難がある場合は健康面の確認が大切です。
Q. 地磁気を感じる能力は本当に犬にあるの?
犬の排泄姿勢や帰巣行動と地磁気の関連を示唆する研究があります。ただし、感知の仕組みや日常の行動との因果関係については、さらに検証が必要です。
FINISH|A LITTLE MORE CURIOUS
まとめ:いつもの散歩が、ちょっと不思議な科学の時間に
犬が排泄前にクルクル回るのには、においや場所の確認などの理由が考えられます。その一方で、犬の排泄時の向きと地磁気の関係を調べた研究が実在するのも、とても面白い事実です。
大事なのは「すべての犬は南北を向く」と決めつけないこと。愛犬が自然に過ごせることを第一に、ときどき方角を記録しながら、散歩の小さな発見を楽しんでみてくださいね。
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WANKOVISTA JOURNALの記事一覧を見る →参考資料・出典
- Hart V, et al. (2013). Dogs are sensitive to small variations of the Earth’s magnetic field. Frontiers in Zoology, 10:80. 原著論文
- Benediktová K, et al. (2020). Magnetic alignment enhances homing efficiency of hunting dogs. eLife, 9:e55080. 研究論文
- American Kennel Club. Why Do Dogs Spin Before They Poop?
- Merck Veterinary Manual. Introduction to Digestive Disorders of Dogs
※本記事は犬の行動に関する科学情報をわかりやすく紹介する一般向けコンテンツです。研究結果は個々の犬の行動や健康状態を診断するものではありません。写真はイメージ画像であり、研究中の犬の実写ではありません。